工事の実行予算とは、工事を完成させるために必要なコストを積み上げた、いわば「予定原価」です。会社が必要とする経費や利益も含めて作成し、工事が始まった後もその予算と実績を比較しながらきちんと管理できるものでなければなりません。実行予算は作って終わりではなく、これから始まる工事の中で管理し続けることが本当の目的です。
工事に必要なコストを事前に把握することは、会社の経営情報として活かされるだけでなく、工事担当者自身のコスト意識を高め、着工後の管理につなげることで、会社全体の経営力強化にもつながります。
① 現場に求められる原価管理と、経理に求められる原価管理は違う
経理に求められる原価管理は「精度」、現場に求められる原価管理は「利益」です。現場に経理と同じ精度を求めすぎると、請求書が揃うまで結果が分からない、後追いの原価管理になってしまいます。
② 工程表との結びつきを忘れない
実行予算に最も必要なものは工程表です。施工前の現地調査で、自社の施工能力をもとにした施工手順・日進量を想定し、それを予算に落とし込みます。積算の標準歩掛から利益率だけを引いた予算は、現場では通用しません。
③ 考慮すべき要素をリストアップする
これらを一つずつ確認しながら積み上げることが、信頼できる実行予算につながります。
工種が多い工事では、工種ごとに実行予算を作成し、日々の損益を管理するのは簡単ではありません。たとえば1億円を超える国道の道路改良工事では、設計工種だけで200工種を超えることもあります。
そこで有効なのが「グループ化」という考え方です。現場の流れに応じて複数の作業工種を一つのグループとしてとらえることで、「予算」「原価」「工程」の3つの管理をスムーズに連動させることができます。工種単位の積算体系をベースに、現場の施工順序に合わせてグループ単位で予算を組み直すことで、日々の管理負荷を大きく減らすことができます。
実行予算の計算は、曖昧な数値や暫定的な数値に頼らない、しっかりとした積み上げ計算が基本です。承認前には、実行予算会議を開くことをおすすめします。
実行予算会議に集めたい人
会議では、作業ごとの積み上げ根拠(歩掛)まで遡って確認すること、そして労務単価・使用機材の単価・資材の納入単価が、今回の現場で実際に支払われる単価になっているかを確認することが重要です。「見積りが間に合わず、過去の実績で暫定的に予算化してしまう」というのはよくある落とし穴なので注意しましょう。
計算した後は、直接工事費と間接工事費の比率、材料費と作業手間の比率、現場管理費と実施工程の関係など、あらゆる角度から分析することで、工期短縮による経費削減余地なども見えてきます。
実行予算書の書式を考えるときの大前提は、「信用できる内容であるか」「経営者が判断するために必要な情報が網羅されているか」の2点です。
基本項目
工事番号/工事名/工事担当者/発注者/発注担当者/工事個所/工期/設計金額/請負金額/実行予算額
詳細項目(自社の方針に応じて選ぶ)
項目を増やすほど精度は上がりますが、自社の今のレベルに合わないテンプレートを現場に求めると、かえって現場の負荷になり、施工に悪影響を及ぼすこともあります。まずは自社の現状を分析し、「何のために実行予算を作るのか」という目的に立ち返って、必要な項目を選ぶことが大切です。
実行予算を正確に管理するためには、原価だけでなく、作業の進捗を示す「出来高」を併せて管理することが欠かせません。出来高が見えてはじめて、実行予算と実績のズレに気づき、手を打つことができます。
実行予算・出来高・コストをしっかり管理