岡山県のMIYAシステムユーザさまが「建設業しんこうNo.438」にて掲載されましたので、ご紹介させていただきます。
特集1 建設業界の経営多角化(2012/6月号 建設業しんこうNo.438掲載)
以下本文抜粋—
特集1
建設業界の経営多角化
建設投資の減少や景気低迷など、建設業を取り巻く経営環境が厳しさを増す中で、新分野への進出によって経営多角化を進める企業が増加している。国による新分野進出支援は1990年代後半から始まり、2003年には、建設業の農業分野への進出辞令が国土交通省の「地域における建設業再生のための先導的・革新的モデル事業」として取り上げられた。2004年には、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省、国土交通省を構成員とした「建設業の新分野進出を促進するための関係省連携会議」が設置された。
こうした経緯の中で、当基金でも建設業の新分野進出・経営多角化を支援している。今回は、「農業」「地域サービス業」「介護福祉業」への進出を果たした3つの企業の先進事例を紹介するとともに、その現状と課題を考えてみたい。
先進事例2
“お家周りの町医者”を標榜
本業に捉われぬ「建設サービス業」で活路
事業の背景
岡山県岡山市の最北部、北区建部町。周囲を山に囲まれ、他の地方自治体と同様に少子高齢化、過疎化が急速に進んでいる。地域密着の土木会社である小坂田建設が「建設サービス業」を開始したのは、2009年春のこと。その経緯について5月11日に就任したばかりの3代目社長小坂田英明氏はこう振り返る。
「売上は2000年をピークに下降線をたどり、2008年末には倒産の危機を迎えました。思い切った手を打たなければ生き残ることはできない。暗中模索の中でたどり着いたのが、『地域のお客様の困りごとを解決し、地域と共に発展する』という道だったのです」
事業の概要
それまでの同社の仕事は公共工事中心。仕事は待つのが当たり前で、客先に営業という発想は皆無だった。しかし、「これからは民間の売上を増やすことが不可欠」と考えた小坂田社長は、小さなことはしてくれないという建設業のイメージを全面的に変える方針を打ち出した。それが“お家周りの町医者さん”というキャッチコピーであり、「笑顔」と書かれたイラストだ。これは本業である建設業に捉われず、地域住民の要望に、ワンストップで対応しようというもの。
この3年間に同社が行った建設サービスの具体的な内容は、「トイレの詰まり」や「雨戸の張り替え」、「雨どいの修理」、「庭の雑草取り」など家内外のことから、田んぼや畑に関することなど、日々の暮らしの中での困り事。その意味で、同社の建設サービス業は、“地域の便利屋さん”と言い換えてもいいかもしれない。
そして、こうした仕事内容を地域の方々に知ってもらおうと「お仕事発表会」というイベントも定期的に開催している。告知のチラシは新聞折込以外に、社員役員一同で住民の家を一軒ずつ訪問して手渡しでも行う。先日、4月29日に開催された第7回「自社お仕事発表会」は、134軒、250名のお客様が来場し、大いに盛り上がったそうだ。 なお、本事業においては原価管理が最も大切であり、原価管理を徹底させるためのITソフトウェアにより日々の損益が明確になり、同社の財務は急速に改善されたという。
今後の展望
「3年の積み重ねで会社の認知度も高まり、同時に受注件数も右肩上がりで増えてきました。雨どいの掃除に出向いたら、家の裏山のブロック積みを頼まれた、といったケースも少なくないですよ。今では民間からの受注が全売り上げのほぼ半分を占めるようになり、赤字経営から黒字転換を果たすことができました」
こう胸を張る小坂田社長。今後は、農業生産法人を立ち上げ、地域で作り手が減少している稲作への進出も検討中だ。目指すは、「地域ニーズの受け皿企業」である。
取材ノート
過疎と高齢化の地域、「そこに住む2,360戸の暮らしの中に仕事がある」が小坂田説。ヒト・モノ・カネの流れにビジネスチャンスを見てきた私には、目から鱗(うろこ)でした。都市で当たり前の多様な暮らしサービス産業、高齢者に有り難いこのサービスがここには無い。一方、建設業には、身体を動かすことを厭わず、技術を持った社員がおり、機械もある。これだけあれば、大抵の注文には自前で応じられるとのこと。修理して欲しいといわれて出かけてみると市の管理施設であることも。早速市と掛け合い事業採択してもらう。身近な公共事業の掘り起こしです。もしもの時に、地域になくてはならない産業だからこそ、暮らしの中の仕事を掘り出し、地域に根を生やしていく。「暮らし」をキーに地域と建設業を結ぶ小坂田さんの取り組み。一つの正解があると考えさせられました。