岡山県のMIYAシステムユーザ 小坂田建設さまが「建設速報 2012年7月3日」にて掲載されましたので、ご紹介させていただきます。
建設速報 ある地域建設業の挑戦―危機からの道程(2012年7月3日掲載)
以下本文抜粋—
ある地域建設業の挑戦―危機からの道程
公共事業の縮小に高齢化や過疎化が加わり、地域建設業は厳しい経営を強いられている。国土交通省の「建設企業のための経営戦略アドバイザー事業」で出口支援企業に採択された小坂田建設(岡山県)も、数年前には倒産寸前まで追い詰められていた。しかし、そこから一念発起して民間部門に参入した結果、赤字体質から脱却することに成功した。同社の取り組みを通じ、地域建設業の活路を探った。
「もう倒産するしかないと思い詰め、自殺まで考えた」。小坂田建設の小坂田英明社長は当時の深刻な状況をこう振り返る。創業から半世紀以上の歴史を持つ同社はピーク時に4億円を超えていた売上が徐々に減り、赤字に転落。平成21年3月に具体的な倒産日を設定するまでに至った。しかし、倒産すれば、会社の借金を肩代わりする先代社長夫婦(現社長の両親)は自己破産を余儀なくされ、社員は路頭に迷う。
そこで、小坂田社長は「どうせだめなら思い切って民間部門に力を入れよう」と決意。自社の強みを分析したところ、地域に密着した建設業者としての信頼や社員の人柄の良さが浮かんだ。
まず取り組んだのは、会社を地域にもっと知ってもらうこと。「お家周りの町医者さん」をキーワードに新聞折込地チラシを配布するとともに、地域交流イベントを開いた。社員全員の似顔絵を載せたパンフレットも作った。そのうちに徐々に仕事の依頼が舞い込んできた。現在は民間工事の受注件数が公共工事の2倍以上に達する。「民間の仕事を続けているうちに、受け身の公共事業では気づかなかった地域の本当のニーズが見えてきた」。高齢化が進んで、手すり・スロープの設置や庭の草むしり、お墓の掃除などの担い手がいなくなっていた。過疎化で「住まなくなった家を解体してほしい」といった依頼も寄せられた。こうしたニーズを掘り起こし、ワンストップで対応することで顧客の信頼を獲得。次の仕事に結び付けた。
経営改革も断行。どんぶり勘定を見直すため、工事原価管理ソフトを導入し、日々の損益が確認できるようにした。「月次単位で経営方針を見直すことができるようになった。業務の進捗状況や利益を“見える化”することで、社員にも計画的に仕事を進める習慣が身に付いた」。
経営改革の成否を分ける要因について小坂田社長は、「最も重要なのは経営者地震が変わること。会社をダメにしているのは社員ではなく経営者。自ら学び失敗を恐れず実践すべき」と強調。社員には倒産の可能性を含め経営状況を公表し、役員給与も全てさらけ出した。権限をできる限り現場に移譲し、やりがいを持てる環境を整えた。
小坂田建設では、近く農業生産法人を立ち上げる。定年を迎えた社員に働く場を提供するとともに、耕作放棄地を減らすことが狙い。地域密着の利点を生かし建築リフォーム分野も充実させる。将来的には、太陽光発電や小水力発電などにも乗り出す構えだ。
「建設業ではなく、建設サービス業として広い視野で地域密着の強みを生かす。地域の受け皿企業として発展し、事業を継続するために1%の可能性を信じて挑戦を続ける」(小坂田社長)。こうした姿勢は、疲弊が続く各地の地域建設業にとって、一つの方向性を示すものとなりそうだ。